2022年5月18日(水)から21日(土)まで東京国際フォーラムで開催される第63回日本神経学会学術大会のテーマは「幸福100年社会における脳神経内科の展望 ~AI技術との共存に向けて~」であり、大会長の服部 信孝 教授(順天堂大学)のライフワークであるパーキンソン病診療・研究の進歩と今後の展望に関して順天堂大学医学部神経学講座が取り組んできた多くの知見が紹介される他、超高齢社会に突入したわが国ならではのテーマやトピックスが満載された学会となっている。また、加齢とともに増える神経疾患が多いことから、神経内科学の重要性、神経内科医の必要性が今後ますます高まることが強調された学会となっている。このような学会のコンセプトを反映して、加齢が重要な危険因子である神経変性疾患、特にアルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などに関する興味深い演題発表が目立つ。また、分子生物学の進歩により遺伝子から表現型に至るまでの複雑な機構の存在が示されており、新たなリピート伸長病に関する報告が行われている。神経変性疾患では残存細胞における蛋白封入体の存在から蛋白分解系の関与が重要視されており、それを標的とする疾患修飾薬の開発の進捗状況についての発表も多い。核酸医療に関する報告も目立ってきた。COVID-19によるコロナ禍が続いているため、COVID-19関連の発表もあり、日常診療の参考となる。また、ガイドラインが改訂された領域の解説も行われており、多くの会員に有用な、啓発的な内容となっている。近未来では医師に代わって人工知能が診断や治療方針決定に有用となることが期待されているが、AIを用いた筋病理の診断アルゴリズムについての紹介も興味深い。