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抗アミロイドβ抗体療法の現況

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の病態と病期

 ADの主要な神経病理学的特徴は海馬や大脳新皮質に広範にみられる神経細胞脱落と老人斑や神経原線維変化の存在である。アミロイドβタンパク(amyloid β protein:Aβ)は老人斑の、タウタンパク(以下、タウ)は神経原線維変化の主要構成成分であり、これらの異常沈着物質がシナプス障害や神経細胞死、さらには脳萎縮に関連するものと考えられている。

 現在、ADは三つの病期からなる一連の病態スペクトラムと考えられている。すなわち、①無症状であるが、アミロイドPETや脳脊髄液Aβの異常などのバイオマーカーがADの神経病理学的所見の存在を示唆する「前臨床期」、②エピソード記憶障害などの生活機能障害をきたさない程度の認知機能障害を有する「前駆期」、そして③複数領域の認知機能障害を呈し、生活機能障害もみられる「認知症期」である。ADの治療を開始できる最も早い時期は前臨床期であり、前臨床期のADは脳内Aβの存在によって定義づけられているが、認知機能低下や認知症に進行するリスクが高い1

ADの臨床試験の概要

 2019年2月12日の時点で、全体では156の抗AD治療薬の臨床試験で132種類の薬剤が試みられている。作用機序では、認知機能改善薬が14%、行動・心理症状に対する対症療法薬が11%、疾患修飾療法(Disease-Modifying Therapy:DMT)は73%であった。DMTのうち、40%は抗Aβ療法薬であり、18%は抗タウ療法薬であった。抗Aβ療法薬、抗タウ療法薬ともに小分子やモノクローナル抗体をはじめとした生物学的療法が含まれていた2

 多くの抗Aβ抗体療法の臨床治験が失敗に終わっていることより、ADのより早期の病期、すなわち、脳脊髄液やアミロイドPETの所見により脳内にアミロイド沈着が認められながら認知機能が正常な段階、あるいは家族性ADの遺伝子変異を有する無症候性キャリアを対象とする傾向が強くなってきた。このような前臨床期ADに対する試みの主な臨床試験は以下の通りである。